焙煎した豆の保存に欠かせない条件とは何でしょうか?
もっとコーヒーの保存が気軽にできるようになるために下記の条件がコーヒー豆にどんな影響を与えるかを見ていきましょう。
- 気密性
- 鮮度
- 冷蔵
1.気密性
酸化を防ぐには気密性が大事です。しかし豆から発生するガス(二酸化炭素など)を適度に逃がしていかないと、その気密性の高い袋はどんどん膨らみ破裂してしまうこともあります。そこで真空包装や炭酸ガスをうまく逃がすワンウェイバルブという袋の中から外へ適度にガスを抜くバルブがくっ付いた包装も選択肢に加わりました。シーラーと呼ばれる機械を使って気密性ある梱包状態を一度開封するまでは、外の空気が逆流し袋の中へ入り込む心配も要りません。
焙煎後に直ぐに豆をワンウェイバルブの付いた袋に梱包すれば、そのまま開封せずに包装したままの袋の内部が二酸化炭素CO2で一杯になり、ワンウェイバルブを通して袋の中の酸素を袋の外側へ追い出してくれます。
焙煎して日数が経つ毎に梱包した袋の内部にコーヒー豆内部から漏れ出たコーヒーガス成分や二酸化炭素CO2などが溜まります。その事は梱包袋の中のコーヒー豆1粒1粒を取り巻く空気に含まれる成分の濃度とガスの分圧を上げていく事に繋がります。その結果としてコーヒー豆内部の目に見えないほど小さな小孔部分に溜まっている二酸化炭素(細胞基質)を漏れにくくすることも期待できます。更に、目に見えない小孔ではなくて、コーヒー豆の内部の目に見える程度の隙間にも溜まる二酸化炭素などのガスは時間が経つごとに豆の外へ流排出していく結果、豆の梱包袋の分圧が高まり、上記の通り、袋内部に溜まる二酸化炭素が袋の中の酸素をワンウェイバルブを通して外へ出してくれる為、その増えるガス圧により、焙煎後のコーヒー豆酸化を防ぎながら豆の香りを比較的長めに豆の内部に保つことに繋がります。
しかしそのことが有効利用できるのは豆を購入した後に初めて開封する前までのことです。購入後は開封する度に袋に空気が入り込みます。包装の内部が再び高圧になるには豆から発生するガスが必要です。その事は大変重要で一度開封すればコーヒー豆から大量の炭酸ガスは発生しにくくなっているので、包装の内部が豆から発生するガスでパンパンに膨らみ酸素を袋から追い出してくれるということは期待出来ないでしょう。
1度開封した後は、ワンウェイバルブ付きの袋には、袋の内部圧力を程良く保ちながらコーヒー豆内部に含まれる二酸化炭素と香りの成分が抜けていくのを防ぐ役割を期待する事はできなくなりますが、包装の中の空気を脱気する事によりなるべく豆の酸化を防ぐことは可能です。袋のジップを閉じ後ワンウェイバルブを通して手で袋の中の空気を出来るだけ外へ押し、袋の中の空気を抜いておくことをオススメ致します。しかし脱気機器などにはかけないでください。吸い込むと同時に豆の内部から炭酸ガスと香りが益々抜けてしまいます。
購入後に瓶に入れてコーヒー豆を保管するのは良い方法です。普通のビニール袋では透過性もあるため、コーヒー豆を普通のビニール袋に入れたままにしておくと、コーヒーの香りはビニール袋の外へ移ってしまいます。しかし瓶ならば透過性もありませんし、まず破裂する心配もまず心配要りません。豆が傷つく事も防げます。上記の理由から、蓋を頻繁に開封する方にとっては密封性の機能のある蓋が付いた瓶じゃないとダメということもありませんが、密閉度の高い方がよりコーヒー豆の酸化や吸湿は防げるでしょう。

しかし瓶保管には欠点もあります。瓶の中に保管している豆の量が減れば減るほど瓶の中に空間体積が増えて、益々瓶の中へ籠る空気は増えます。焙煎したばかりの豆を瓶で保管する場合、酸化が進行中の豆から出てくる悪臭なガス、そのうちの1種の成分ジメチルジスルフィド(CH3-SS-CH3)など、が瓶の内側に籠ります。瓶や袋の保管によって叶えられる香りの賞味期限は、悪臭が増えてくることを踏まえても、1週間と言われています。長期保管に向くわけではありません。

2. 鮮度
コーヒー豆の香りの成分は豆から出てくる炭酸ガスと一緒に抜けていきます。そのため、「鮮度を保つ=必ず気密性を保つ」ことだと思っている人も少なくありません。しかし、そうとも限りません。これには要注意です!豆を挽いた後は特に気をつけねばなりません。
豆を挽いた後は空気に触れている部分の豆の表面積が増えるので、急激に酸化が進み出します。お店で豆を挽いてから密封しようとして、脱気機器にかけられてしまうようなことがあればすぐに止めてください。脱気した瞬間に大分豆から炭酸ガスと共に香りが既に抜き取られてしまうからです。それでは鮮度も味も台無しです。香りやガスを抜き取られてしまうくらいなら、豆を挽いてから家に持ち帰ってすぐ飲む間くらいは、コーヒーが酸化することに妥協した方が良いでしょう。
鮮度を保ってくれるものがあるとすれば、それは焙煎したばかりの「豆」そのものだと思います。豆は成分を保管しててくれるカプセルの様な役割も持っています。豆の焙煎の仕方によっては豆に目に見えないほどのミクロな亀裂が入り、短期間で揮発性の高いガスから漏れていきます。しかし余計な熱量や圧力で豆を焦がしたり傷つけたりしなければ、焙煎後1週間〜10日間程は豆自身がカプセルのようになって豆の中に成分を保管していてくれるものです。だから豆を粉に挽いてしまった時点でカプセルは粉々ということになりますから、豆の中のガスや成分がどんどん揮発し始める訳ですね。
3.冷蔵
それでは冷蔵庫や冷凍庫はどうでしょうか?焙煎したコーヒー豆の鮮度は保てるのでしょうか?その答えは近年とても効果的だということがわかって来ました。
冷蔵は湿気ある冷蔵庫では吸湿するのを避けなくてはならないという理由からオススメされておらず、冷蔵は水分は凍らせると結晶化により体積が増えるので凍らせると豆の内部の構造を壊してしまうので、豆の内部に含まれる香り成分とその他の二酸化炭素を含むガス含有量が一気に減ってしまうのではないか?という理由から避けられて来ました。
近年その答えは見直され、湿気の籠る様な冷蔵庫でない限り、鮮度がより良く保てることが解って来ました。ローストした豆に含まれる水分は僅か1〜2%程度で、凍らせても結晶化する程にも及びません。豆の構造を傷つけてダメージを与えてしまう心配は要らなかったのです。
冷凍で1〜2週間保管した豆を挽いた際に排出されるガス排出量と、普通の部屋温度で1〜2週間保管した豆を粉に挽いた際のガス排出量を比較しても、その差がほぼ無いことが実証されました。これにより豆の内部に含まれる水分の結晶化による豆の構造のダメージによって二酸化炭素などのガス排出スピードが上がる懸念は払拭されました。このことはSCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)により解明されました。
更に−25℃で70日間保管した際のローストした豆から排出されるガスの量は、35℃で2日間保管された時に排出されるガスの量と同等だということがSCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)により検証されています。-18℃で保管する豆は、25℃の部屋温度で保管した豆よりも2.5倍低いオフガス率(ガス排出率)です。その事は-18℃で保管すると、もし普通に保管した際の賞味期限が4週間だとすると、冷凍で保管する豆の賞味期限は3ヶ月〜12ヶ月に延びます。(SCAAのFreshness Hand Bookより引用)
上記のことを踏まえると、3ヶ月以上も長期保存してから飲みたいと思わないのであれば、結局、焼きたての豆を冷蔵や冷凍をする必要はないかと思います。特に焙煎して1〜2週間で鮮度あるうちに飲み切りたいという方へは冷蔵や冷凍はオススメしていません。それよりも焼きたて鮮度のある内に美味しく飲むことを是非とも優先して下さい。
4.まとめ
これらを踏まえると、購入後開封してから気密性にこだわって賞味期限を延長させることは非常に困難です。賞味期限を延長することよりも、そのコーヒーの鮮度のあるうちに賞味期限内に美味しく飲み切ることがオススメです。10日間〜2週間程度で飲み切れる量の豆を買ったのならば保管する際に気密度などほとんど気にしなくても良いですし、冷蔵や冷凍する事も必要ないでしょう。直射日光が当たるのを避けるのと湿った空気の場所に置かない様に気を配る事だけで十分です。
湿度や直射日光を避ける為には、出来るだけ空気を入れない様に売られている時からコーヒー豆を梱包しているビーンズバッグに入れて置くだけで保存しておくだけでも十分です。分厚いアルミニウムのビーンズバッグなら更に直射日光の影響を避けられるでしょう。
もし2週間〜10日間よりも長く豆を保存しておこうと思っている方は、冷蔵や冷凍により品質の劣化を遅らせられます。約3ヶ月程は保管していたいという方へは冷蔵と冷凍をオススメ致します。しかし、約2週間〜10日間くらいで飲み切れると思う量ずつ買って鮮度の高いうちに飲みきるのがコーヒーを1番楽に楽しく美味しく飲むコツだとお勧めします。
保管に大切な条件:
- 鮮度の高いうちに飲みきること:自分で1ヶ月程度で飲み切れる量を知っておく。
- 酸化をできるだけ防ぐこと:湿度の高い場所に保管しない。気密性のある瓶などに入れて保管する。
- コーヒーが持つCO2を鮮度の指標とする:コーヒーを梱包する気密性ある袋か瓶の内部に溜まるCO2のガスの分圧を高め、それを指標としながらも、コーヒー豆内部に含まれる他の揮発性のコーヒーの香りの成分もなるべく豆から抜け出ない様に保管する。(1度開封した後は、コーヒーの適切な抽出時間やクレマの出方を指標とすることもできる。)
- 豆に傷が付くのを防ぐ:瓶などを使って豆をなるべく傷つけないように保管し、コーヒー成分が豆から出来るだけ漏れ出ない様に工夫しましょう。
- 豆が吸湿してしまうのを避ける:直射日光、高温多湿を避け、涼しいところに保存する。
- 豆を粉に挽いたら直ぐに抽出する。:豆を挽くと一気にコーヒーの酸化が進み、急速に豆の細胞の1粒1粒の中に含まれる二酸化炭素が抜け始め、香りも味も急速に劣化し始めます。ぜひ挽きたての新鮮なコーヒー豆を抽出してみて下さい。
おまけ
質問:なぜ豆から炭酸ガスが抜けてしまうと、ドリップで味が薄くなってしまうのでしょうか?
答え:ガスが抜け落ち過ぎてしまったコーヒーは、ドリップで抽出する際に、お湯をかけても膨らまなくなります。そうなってしまうと、コーヒーの豆の組織が開きにくくなり、成分の抽出効果が悪くなってしまいます。
焙煎してから程よいガス抜きは抽出を簡単にしてくれる効果がありますが、ガスを抜き過ぎてしまうと、ドリップ抽出では良い味を引き出せなくなります。

